粉川哲夫の「雑日記」

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2023/08/17

これがとどめか? ジョージア州選挙詐欺疑惑起訴

どうもマスメディアで思い違いが独り歩きしているという気がして、ChatGPTについて書こうとしていたら、8月14日、いや日本時間では8月15日の朝方、トランプが4度目の起訴を受けたニュースが飛び込んできた。→CSPAN:Fulton County District Attorney Fani Willis on the Indictment of Former President Trump

今度は、トランプ劇場の大詰めとして期待されていたジョージア州の起訴である。買春もみ消し疑惑、女性レイプ疑惑、国家転覆疑惑の3つの起訴との決定的なちがいは、ジョージアのこの「大統領選挙転覆疑惑」で敗訴した場合には、たとえトランプが2024年に大統領になって自分を恩赦してうやむやにしようと思っても出来ないという点である。

ちなみに、買春もみけしとレイプの前2者は、ニューヨーク州の起訴だから連邦を代表する大統領が手を出すことはできないが、これでトランプが刑務所に収監されるという可能性は薄い。巨額ではあっても罰金、つまりは金で解消される度合いが強い。しかし、州の場合は、映画でFBIとシェリフや市警との確執が描かれるように、州は連邦の横槍を嫌うので大統領も手を出せない。

そのうえ、ジョージア州フルトン郡で起訴された被告は、通常、フルトン郡のライスストリート刑務所に収監されるので、今回は、前3回のようにおおいばりで(保釈金もなし、拘束条件もなし)フロリダにもどることは出来ない可能性がある。検事のファニー・ウィリスは、8月25日までに出頭することを条件づけた。来週だ。またTRUMPマクーの自家用機ではでに飛来するのだろうが、帰りはどうなるか?

ジョージア州の選挙へのトランプの介入に関しては、すでに2020年にリアルタイムでリポートした。ここでは、トランプが開票に不正があったとクレイムをつけたので、開票をやり直し、不正がなかったことが判明したという経緯がある。2020/12/31 に書いた「悪魔はジョージアへ」のその部分を引用しておく。

デジャヴュ− 2020/12/31

面白いのは、トランプが、ジョージア州の選挙に不正があった(それも、ヴェネゼラの独裁者チャペスが選挙で使ったソフトを作っている会社の投票システムが使われているといった途方もないデタラメ――これで、投票機械の会社はトランプ側を訴えている)として再集計を求めたとき、選挙管理を統括する州務長官のブラッド・ラッフェンスパーガー (Brad Raffensperger)が、自らは共和党員であるにもかかわらず、その要求の不当さ、開票事務にあたった労働者を愚弄するものであることを批判し、「じゃあ、すべて手作業で再集計(約500万票)をしましょう」と言い放ったのだった。 これは、最初、不可能に近く、全州が結果を出さなければならない12月8日までは無理なのではないかとあやぶまれたが、彼はそれを貫徹し、バイデンの勝利を再確認した。トランプは、むろん、それでも「不正」だと言い続けたが、こうなると、見苦しい。

役者がはまりすぎ

今回の起訴は、トランプとその共犯者18名が組織的に詐欺・恐喝・公文書偽造等の刑事犯罪を行ったとされているが、共犯者のなかには、元ニューヨーク市長までやったルディ・ジュリアーニ(こいつのおかげで街が警察官だらけになった)、投票システムに投票を操作する仕掛けがあったと荒唐無稽の主張をプロパガンダしたシドニー・パウエル(が、その製作元から訴えられ巨額な賠償を求められている)、トランプの元ホワイトハウス首席補佐官のマーク・メドウズといった大物の名があがっている。が、キャスティングとしては、はまりすぎだ。→参考

トランプは、最初の組閣で大向うのウケねらいの人事をやったが、次第に彼らが手を引き、最後には最悪のスタッフだけが残ったというパターンを踏んでいる。ジュリアーニがそもそも最たる者だが、彼が連れてきたシドニー・パウエルのひどさは、このビデオを見れば一目瞭然だ。陰謀理論丸出しのパウエルの演説の短絡にジュリアーニを含む周囲が呆れて笑った、とわたしは思ったが、トランプ陣営は、これでもまだこの陰謀主義おばさんを捨ててはいなかったらしい。→YouTube

クライマックスへの期待

トランプ劇場は、大統領の座に無理やりとどまり、独裁権を握ろうとするトランプが、何度訴えられても知らぬ存ぜぬを決め込むが、その同伴者の裏切りにも遭って次第のそのしたたかさがくずれていくという滑稽な茶番としては楽しめる。が、2020年の選挙は「盗まれた」といまだに主張し、自分への起訴をバイデンと「ディプーステイト」(DS)による「魔女狩り」、2024年の大統領選への出馬の阻止だと繰り返すパターンは、いささか陳腐になってきた。政治を「ドラマ」に、自分を「スター」にしたいのなら、このへんで大きな転換が必要である。

ゴーンの教訓

その意味では、保釈中にいきなり国外にとんずらしてしまったカルロス・ゴーンのほうが役者としてはうわてである。彼は、のっぺりした退屈な訴訟ドラマにスリリングな山を作った。というより、彼への起訴そのものを異化してしまった。
トランプは、大型の自家用機を持っているのだから、国外脱出はむずかしくはない。ただし、いまだに密着しているシークレットサービスをどうするかだ。それと、もしそういうプロットを実現するとしたら、8月25日以前、つまりはあと1週間しかない。→末尾の【追記】参照

「亡命政権の樹立」?

カッコをつけるのが好きな見栄っぱりのトランプとしては、詐欺師が海外に逃亡するようなチャチなドラマでは満足できないというのなら、「亡命政権の樹立」か? そうなると、トランプ劇場も国際ドラマだな。調べてみると、亡命政権というのは、けっこうある。→Current government in exile

しかし、そういう構想には夢中になるはずのスティーブ・バノンが、今回の起訴にも、ジャック・スミスのJ6「国家転覆」起訴の主な「共犯者」のリストにも、全く含まれていないのはなぜか? これは、いずれ考えてみよう。

【追記】

初期の選挙対策キャンペーンのアドヴァイザーをやったジェイソン・オズボーン (Jason Osborne)(8月18日)の放言によると、トランプは、8月23日にアイオワ州で予定されている共和党の大統領候補討論会の前日か当日にジョージア州の裁判所に出頭するだろうという。つまり、その「ブレイキング・ニュース」で討論会を空無化し、すでに「なんで俺が出る必要があるのかい」と誇示しているのをさらに印象づけ、たとえ勾留されたとしても、逮捕で支持者を増やして2024年の大統領選に役立てようというわけだ。たしかにトランプ流の演出としては、そのほうが「亡命政権」より地道だな。統計上では支持率は必ず増えるが、それが本当にトランプ支持であるかどうかはわからないとしても。

【追記】

月曜日(8/21)のジョージア州フルトン郡の裁判所の発表では、トランプの保釈金額が200,000ドル、日本円で約2,900万円と決まった。ということは、今度は、指紋と顔写真をとられ、局部の検査もされ、一度は留置されるということになる。さて、どうするトランプ君?ああ、それから、今度は法廷にカメラが入るらしい。これは、トランプの好みでもあろう。

【追記】

トランプは、月曜に書かれたTruthSocialで、8月24日(木曜)にジョージア州アトランタに出頭すると宣言したとのこと。