★★★★★  オブリビオン (Oblivion/2013)
地球の荒廃と汚染、人類の終末、異星への移住、クローンの実存、記憶の操作といった気を惹く未来的なテーマは悪くない。しかし、地球や人類の終末が巨大な単一の力によって左右されるという前提、映画的効果とはいえ、2077年の宇宙船や偵察機があいかわらず轟音を発し、破壊的な武器がハデな焔や煙を発するのは古すぎる。『ブレードランナー』には、未来を描き、映像も未来的な雰囲気が横溢していたが、本作は違う。

★★★★★  スプリング・ブレイカーズ (Spring Breakers/2012)
ミュージックビデオとして見れば、悪くない。レイブ的熱狂やナルシスティックな集団性への願望とシニカルな目とが揺れ動く。ドラッグ的な幻想とも映画内現実ともとれる映像は面白い。が、ジェイムズ・フランコが演じるラッパー兼ハスラーはぶっ飛んだキャラクターだが、映画全体としてはぶっ飛んでいるようでそうでもない。結果的に、

★★★★★  25年目の弦楽四重奏 (A Late Quartet/2012)
第1ヴァイオリン(マーク・イヴァニール)、第2ヴァイオリン(フィリップ・シーモア・ホフマン)、ヴィオラ(キャサリン・キーナー)、チェロ(クリストファー・ウォーケン)で25年続いたカルテットが、ウォーケンの病気で危機に陥る。が、その危機は、人間関係の危機でもあった。見どころは、カルテットの演奏上のドラマよりも、また病に悩むウォーケンの心の揺れよりも、ホフマンとキーナンが演じる夫婦間の危機のほうである。それぞれに如才ない配分を気配りした演出だが、キーナーの張りつめた演技のせいか、この二人のドラマが突出する。

★★★★  終戦のエンペラー (Emperor/2012)
日本人が登場する英語の大作ドラマとして、日本語の台詞や日本に関する平均的な常識を無理なく表現しているところが評価できる。昭和天皇が平和主義者で軍に逆らって終戦に持ち込んだという歴史解釈には異論があるが、すべてがあいまいさをはらみ、責任の主体がはっきりしない源流を日本の文化そのものに求める解釈ははずれてはいない。依然としてそうしたあいまいさをはらむ天皇制国家であることには変わりない日本について考えるためにも、必見である。

★★★★  ベルリン ファイル (The Berlin File/2013)
ベルリンを舞台にした韓国映画というと眉に唾しそうだが、そうではない。逆に、実にいいところに目をつけたと言うべきだ。ベルリンと北朝鮮との関係は複雑で、壁が崩壊したとき、ベルリンのツオー駅の路上で旧独の紙幣を売ろうと必死の顔をしている朝鮮人が何人もいた。ベルリンはその後も北朝鮮にとって複雑な窓口でありつづけており、この映画のような出来事もありないという雰囲気である。意外な場所での南北対立、キム王国内での高官たちの権謀術数、アラブ勢力や国際的な諜報機関の利害が複雑にからむ。銃撃と格闘のシーンもしつこいくらい手抜きがない。チョン・ジヒョンが色を添え、悲しいラブストーリにもなっている。

★★★★★  バーニー (Bernie/2011)
社会が生み出す新しキャクターに関心のあるリチャード・リンクレイターの新作というので期待したが、すこし考え込んだ。主役のジャック・ブラックへの先入観がありすぎるのか、〝信仰の篤い善人〟を素直に演じられると、もっとなにかあったんじゃないのという気がしてしまう。実話にもとづくとはいえ、映画としては、最初に映される〝送り人〟としての才能が後半どこかへすっ飛んでしまい、また、彼が愛するようになる高齢の未亡人(シャーリー・マクレーンを起用しながらも)の反応があまりにワンパターンで、映画のなかではおよそ彼が愛するにたらない自分勝手な酷い女だということになっているが、その実感がわかない。ただボケているだけじゃないのと思ってしまう。が、こういうバーニーのような〝無垢さ〟が突然変異的に出現する異常さがいまのアメリカにはあるのかもしれない。

★★★★  ペーパーボーイ 真夏の引力 (The Paperboy/2012)
湿度の高いフロリダ州モート群のジャンセン家のメイドとして長く務めたアニタ(メイシー・グレイ)にインタヴューし、彼女が物語るという形式で進むこの映画は、<物語>(ナレイション)であるかぎりにおいて、勝手な与太や想像を含むと考えるべきだ。メイシー・グレイのような存在感のある語り/騙りのプロを起用した所以でもある。音楽と音の入れ方も、素朴なリアリズムに対し距離を取った非常にユニークなセンスに満ちている。が、この映画の賛否は、ニコール・キッドマンの放尿シーンよりも、密林に住む男(ネッド・ベラミー)がジャンセン兄弟(ザック・エフロンとマシュー・マコノヒー)の目のまえで鰐をナイフで解体するシーンをどう取るかで決まるだろう。むろん、わたしはこの映画のすべての〝悪趣味〟を肯定する。

★★★★★  殺しのナンバー (The Numbers Station/2013)
エイジェントに秘密の指令を発する〝乱数放送〟の基地を現場にしている点で興味深いし、甘さを落としたジョン・キューザックの演技の変化を見ることができる点でも面白いのだが、この秘密のラジオ局の技術環境が正しく描写されていないので、全体としてただのサスペンスに堕している。実際の乱数放送は、少なくともこの映画が示唆するいまの時代には、基地を分散し、声もロボットボイスを使うので、生身の暗号解読エキスパート件アナウンサーなどを決まった場所に護送する必要などない。

★★★★  グランド・マスター (Grandmasters/2013)
『イップ・マン 序章』(2008)と重なる部分があるが、映画の質が全然ちがう。その美しさは、これまでのウォン・カーウァイの作品のなかでも群を抜いている。トニー・レオンの高貴さをただよわせる余裕、チャン・ツィイーのせつない凛々しさ。愛としての格闘と復讐としたの格闘。最後は、もうあともどりできない時間へのノスタルジアを高めるが、それはチャン・ツィイーがひとり吸うアヘンパイプの煙のように、つかのまただよっては消えてしまう。

★★★★★  ファインディング (Gone/2012)
警察の人間として、ダニエル・サンジャタ、マイケル・パレ、なかでも意味ありげにふるまうウェス・ベントリーのようなそこそこの俳優が登場するが、すべてはアマンダ・セイフライドの〝一人芝居〟。それはそれでいいし、サスペンスとして引き込むのだが、なんか変。警察がまったく無能だという意味か?

★★★★★  最後のマイ・ウェイ (Cloclo/2012)
日本では同時代にすっぽり抜けていた60~70年代フレンチポップスのいかなるものかもわかる。アメリカとちがって、父権主義も強かった。 [→ノート]

★★★★★  イノセント・ガーデン (Stoker/2013)
ビッグスターをそろえ、あの『オールド・ボーイ』のパク・チャヌクが監督しながら、偽ヒッチコック的な思わせぶりが混じりこむ。

★★★★★  17歳のエンディングノート (Now Is Good/2012)
ダコタ・ファニングのイギリス英語へのチャレンジは、すでに出来上がってしまった型を脱皮するチャンスになっている。舞台となているブライトンの景色が美しい。

★★★★  中学生丸山
なぜ〝自主フェラ〟(自分のペニスを舐めること)は手淫にくらべて一般的ではないか、そしてひとは普通他人を殺すことをしないのかという大疑問が、あわせて考察される。詳細は『キネマ旬報』の連載を参照してください。

★★★★★  死霊のはらわた (Evil Dead/2013)
1981年のサム・ライミ自身が監督した作品のリメイクだが、はたしてその必要があったのか? マニアの感想はちがうだろうが、役者のレベルは前のほうが上だったし、セクシー(エロティシズム)度も旧作のほうが高かった。

★★★★★  欲望のバージニア (Lowless/2012)
禁酒時代の取締官を演じるガイ・ピアースが抜群の演技を見せる。この憎々しく卑怯な演技によって、大胆な密造と密売を行う3人兄弟の暴力と復讐が正当化される。

★★★★★  ロマン・ポランスキー 初めての告白 ( Roman Polanski: A Film Memoir/2011)
2008年の『Roman Polanski wanted and Desired』ですでに明かされたこと以上の発見はないが、『戦場のピアニスト』に、彼の少年時代の経験がたっぷり投入されているという告白は、あらためてこの作品を再見したくなる。

★★★★  セレステ&ジェシー (Celeste & Jesse Forever/2012)
ショットと音楽とのカットゥン・ミックス、そしてソングの選曲が絶妙だ。主演・脚本・製作総指揮のラシダ・ジョーンズはクインシー・ジョンズの娘。ユダヤ人の母親ペギー・リプトンから引き継いだトレンドに敏感なセンスは、この映画にも反映されている。離婚を決めたけれど同じ敷地に住み、フレンドとしては超親しいセレステとジェシー。平均的なのは大嫌いなセレステと月並みを選ぶジェシーとのちがいのあいだから今が見える。『キネマ旬報』5月下旬号の「ハック・ザ・スクリーン」にレヴューを書いた。

★★★★★  コンプライアンス (Compliance/2012)
金がからまないおれおれ詐欺みたいな話だが、映画自体が本来だましで出来ていることを思うと、それを映画にするときには、もうひとひねりほしい。実際にあった出来事だというだけではなく、最後の部分でなにかひとつほしかった。

★★★★★  マニアック (Maniac/2012)
変態的残酷趣味はなかなかいいのだが、そういう行為にはしる理由づけが単純すぎる。

★★★★★  アンコール (Song for Marion/2012)
老人の仲間入りできない男の違和感と、そういう人物を演じながら、自分ならこうはならないぞと言っているかのようなテレンス・スタンプの意識の微妙な乖離が見えるのが面白い。

★★★★★  オース!バタヤン
懐かしの田端義夫だが、銀幕のスターでもあったことにはほとんど触れていない。が、実演の記録だから、その老いたる姿も無残ではない。調弦にYAMAHAのブラウン管式シンセを使っているのには驚いた。

★★★★★  プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命 (The Place beyond the Pines)
ライアン・ゴズリングが演じる銀行強盗犯の前半はひきつけるが、彼を撃った功績から上昇していく警官(ブラッドリー・クーパー)の自責の念が、彼の息子とゴズリングの遺児との予想外の遭遇がからんで錯綜する。が、問題を次世代に持ち越した意味はあまりなく、蛙の子は蛙のような話で終わってしまう。

★★★★  ホーリー・モーターズ (Holy Motors/2012)
映像のディテールをアナグラム的に追及するには飽きない作品。 [→ノート]

★★★★★  パラノーマン (ParaNorman/2012)
死者の姿が見えてしまうという超能力の少年の話だが、ヒキコモリやアスペルガーの子が家にいた場合どうするかという話でもある。

★★★★   三姉妹~雲南の子 (Three Sisters2012)
母親はどこかに消え、父親は出稼ぎに行っているので10歳、6歳、4歳の女の子が祖父と暮らしているが、服も着替えず、シラミの湧くまま、食事は粗末なジャガイモや麺というと、いかにも悲惨に思うかもしれないが、カメラの存在を出演者に全く感じさせず、インタヴューなどしないワン・ビンの〝秘術〟によって、映される世界が、自律した世界になり、変な同情や憐みをかけることを排除する。むしろ、彼女らが家畜や大地とともに生き生きと生きているようにすら見える。

★★★★★  ビトレイヤー (Welcome to the Punch/2013)
犯罪から身を守るために銃の携行を自由化すべきだという一見もっともらしい発想の背後には、銃の流通を拡大しようとする軍事産業のたくらみがひそむ。この不気味な回路のなかに、最初は追う者と追われる者との関係だった刑事(ジェームズ・マカヴォイ)と悪党(マーク・ストロング)とが巻き込まれて行き、共闘することになる。銃社会への批判がありながら、銃撃シーンには著名なアーマラーが担当し、迫力を出している。
★★★★★  天使の分け前 (The Angel's Share/2012)
最近のケン・ローチのなかではいいほうだと思がが、なんかひっかかる気がしてスカっとしない。職がない若者が計画的に醸造所から樽1本で1億円以上もする高価でレアなモルトを盗むのに成功し、ね、痛快でしょうと言っているのだが、底辺の連中が銀行を襲うのにくらべて、後味が悪いのはなぜか?[→ノート]

★★★★★  モネゲーム (Gambit/2012)
コリン・ファースもアラン・リックマンもスタンリー・トゥッチもトム・コーネイもキャメロン・ディアスもみないい演技を見せるが、どこか燃焼度が低い。あまり笑えない。脚本のコーエン兄弟のねらいが十分演出されていないのではないかと思う。

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