屋根裏部屋のマリアたち

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屋根裏部屋のマリアたち評点:★★★★ 4/5ファブリス・ルキーニ親代々の家に住む男『親密すぎるうちあけ話』子供っぽいが理想を生きるイオネスコの芝居サンドリーヌ・キベルランポルトガルのメイドたちそれぞれにうまく演出されたエピソードにあふれる1962年のパリHome:粉川哲夫のシネマノート
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屋根裏部屋のマリアたち

原題:Les femmes du 6ème étage (2010)       英語題名:The Women on the 6th Floor

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評点:★★★★ 4/5

●主人とメイド(たち)の関係はメールヒェン的ではあるが、階級をへだてる線を越えるということの解放感がくりかえし描かれる。憐憫や施しではない「あたりまえ」の素直さや優しさがこの映画ほど抵抗なく描かれている例はめずらしい。証券業をやっている主人公(ファブリス・ルキーニ)がこんなに素直で大丈夫なのかと思わせもするが、ここがこの映画の「メールヘン」的なところ。ファブリス・ルキーニをはじめ、カルメン・マウラやベルタ・オヘアのようなスペインの力量のある俳優たちもすばらしい。

●夫人が古いメイドをクビにしたので、新しいメイドが来る。それを演じるのが、Natalia Verbeke(ナタリア・ヴェルベケ)。こうなると、ルキーニが演じるジャン=ルイと彼女とが愛情関係をもつことになるだろうということが予測できる。

●彼が育った部屋は、いま物置になっているが、妻が仕事の関係の未亡人との浮気を疑って彼を追い出したとき、彼は迷わずそこに住む。

●証券取引という味もそっけもない世界にいるルキーニが、スペインからの底辺の女たちが生活を愛していることに驚く。

●メイドたちが使っている共同のトイレがひどいことになっているのを知った彼は、水道屋を呼ぶ。感謝した女たちは、彼を見直す。

●ジャン=ルイが、どんどんマリアに惚れ込んでいくが、それをあからさまには描かなのがいい。

●異文化と異言語、主人とメイドのラブストーリーだが、主人が自分の階級を選びなおす(それも決して劇的ではなく)ところが感動を呼ぶ。

●『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』のフランス版の趣がないでもないが、こちらは、差別を問題にするのではない。むしろ、差別されているとして も、スペインン戦争の時代にスペインからやってきてメイドとして働く女性たちの日常的な仲間関係がいきいきと描かれている。

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ファブリス・ルキーニ

●ファブリス・ルキーニが演じるジェン=ルイ・ジュベールは、証券会社の経営者だが、祖父以来の仕事を引き継ぎ、自分が生まれたアパルトマンに住んでいる。気性は「おぼっちゃん」。メイドたちにとって、サンドリーヌ・キベルランが演じる奥様は怖い存在だが、彼はカワユイ存在。