ルーパー/LOOPER

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ルーパー/LOOPER評点:★★★★★設定されている諸前提ルーパートラウマゴードン=レヴィットとウィリス銃HOME: 粉川哲夫のシネマノート
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ルーパー/LOOPER

■Looper/2012/Rian Johnson(ライアン・ジョンソン)

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設定されている諸前提

◆舞台となるアメリカは、2012年以後の30年間に経済的に破綻し、街のひとたちは、たがいに相手を信じない状態に陥っている。いわば、<マッドマックス>的状況である。不審な相手にはすぐ銃をぶっぱなす。

◆理由はわからないが、2012~2042年の時代に、生まれつき"TK" (Telekinetic/テレキネティック) パワー、すなわち距離をおいて物体を動かせる能力を所持する者が生じ、人口の10%にも達している。しかし、その能力は、コインを手の平のうえで浮かせる程度のつまらぬ利用しかされていないという。

◆この映画の<現在>は2042年に置かれているが、これから30年後の2072年には、監視技術が進み、個々人は完全な監視下にある。そのため、人を殺しても、死体が感知され、捨て場所がない。

◆2042年~2072年の時代に、タイムトラベルの技術が具体化した。しかし、これはすぐに禁止され、非合法で使われるだけになった。犯罪組織(まだあるの?)は、人を殺して、死体を抹殺するためにこの技術を利用する。別の時間帯に送り込んで殺し、そこで死体の処理をする。えらくもってまわっているが、これがこの映画の前提だ。

◆もってまわった前提だが、2005年うまれのピアース・ガニオンという天才的な少年俳優が演じているシドという子が登場する。彼は、幼いときに母親をルーパーに殺されたという傷痕を持っている。その後は母親の妹サラ(エミリー・ブラント)に育てられた。(殺されたのは実は妹のほうで、シドがそう思い込んでいるだけだという暗示もあるが、ここでは触れない)。この子は、この傷痕的記憶のために、成長してからすべてのルーパーを抹殺しようとする。そこで、2072年の時間帯の犯罪組織は、その<根>を絶つべく、この子どもを探すことになる。

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ルーパー

◆ゴードン=レヴィットが演じるジョーは、30年先の時間(2042年)に存在する犯罪組織がタイムマシーンで送り込んでくる人物を銃で撃ち、殺して死体を捨てる仕事をしている。イントロで、ジョーが野原で待機していると、シートを広げた地面にいきなり腕を縛られ、頭に袋をかぶせられた人間があらわれ、それをジョーがショットガンで撃つ。あとは死体をそのシートにくるんで運び、捨てる。その人物は背中に銀塊をまきつけており、それがジョーの仕事代となるらしい。〝ルーパー〟という彼の仕事の概略だ。

◆2072年の時間世界の殺し屋(ルーパー)が邪魔になったときにも、30年まえの世界に送られるが、そのルーパーを殺すのは、その本人ということになっているらしい。その際、目印として、殺される者が背中に巻きつけているのが、通常は銀塊なのに対して、金塊になるのである。

◆ジョーは、あるとき、送り込まれて来た男が頭に袋をかぶらずにあらわれる。見ると、それは未来の自分である。ただし、このシーン、いきなり禿げ頭のブルース・ウィリスが出てくるので、映画とは別に笑いたくなる。この禿げ頭では、ジョーが、これは未来の俺だと気づくだろうかという疑いは残る。ちなみに、この〝オールド・ジョーー〟が頭に袋をかぶせられていなかったのは、彼が自分でタイムマシーンに飛び込んで逃げてきたからである。犯罪組織に強制的にタイムマシーンに入れられるまえに、彼を拘束する連中を倒し、自分でカプセルに飛び込んでボタンを押したのだ。

◆この映画、些末なところで妙に律儀であり、それがスタイルになっている。ジョーは、ブルース・ウィリス演じる禿げ頭の男が自分だとすぐ気づくわけではなさそうだ。その驚きの表情は、被殺害者が、このときだけむき出しの頭だったからだろう。だから、彼は銃を発射する。しかし、その弾は身体の向きを変えた〝オールド・ジョー〟の背中に当たり、巻きつけていた金塊が肉体の損傷を防ぐ。〝オールド・ジョー〟は、そのとき飛び散った金塊のひとつを素早くつかみ、ジョーに向かって投げつける。それが当たったっジョーは、地面に昏倒し、そのすきに〝オールド・ジョー〟はいずこかに逃げ去る。

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トラウマ

◆かなりひねってはいるが、この映画でもトラウマ理論が使われている。2042年の時間帯で幼児のシド(ピアース・ガニオンの驚異的な演技)は、もっと小さなとき、ルーパーに〝母親〟を殺された。いっしょに住んでいるサラ(エミリー・ブラント)は自分が母親だとも言うが、いずれにせよ、シドには、〝母親〟の死を目撃したことが精神的傷痕になり、のちにルーパーを一掃する指導者になる。2072年の時間帯の犯罪組織は未来のシドを恐れており、時間操作によって、シドを抹殺しようとする。ルーパーとしてのジョーは、この子を殺さなければならなくなるが、そのことを知る以前にこの〝母子〟と知り合った彼は、複雑な状況に追い込まれる。クライマックスのシーンは、ジョーの苦肉の一策である。

◆〝母親〟を殺されたシドが、ふたたびサラを殺されることによって、この子はその恨みを肥大させ、ルーパーを消滅させる指導者(レインメイカー)への確固とした道を歩むだろう。そのトラウマを絶つことのほうが、彼を抹殺するよりも有効だろう――こうジョーは内的独白する。しかし、この考え方は、中心人物を抹殺すれば<根>が絶てるという発想とともに、根拠がない発想だ。トラウマを意識化し、無化すれば別の道が開けるという発想は依然として流行っているが、その真偽の保証はない。

◆そもそも、時間を過去にさかのぼって未来を変えるという発想も、未来が過去の蓄積であるという単純な発想にもとづいている。実際には、未来は<過去からの飛躍>かもしれない。過去と現在と未来とのあいだに連続性はないかもしれない。

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◆未来ものだが、銃のシーンはかなり凝っている。これに関しては、imfdb (the Internet Movie Firearms Database) が詳細に解説している。

◆ジョーのショットガン→"Blunderbuss"

◆ジョーも持っているが、ノア・セーガンが演じるキッド・ブルーも持っているGatピストルは、実在するMagnum Research BFRだという。

◆サラのフィールド・ガン→Remington 870