2012年8月公開

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2012年8月公開遊星からの物体X ファーストコンタクト ★★★★★画皮 あやかしの恋 ★★★★★あの日 あの時 愛の記憶 ★★★★★トガニ 幼き瞳の告発 ★★★★★セブン・デイズ・イン・ハバナ ★★★★★ハーフ・デイズ ★★★★★トータル・リコール ★★★★★ヴァージニア ★★★★★テイク・ディス・ワルツ ★★★★★「わたしの人生」我が命のタンゴ ★★★★★ヘッドハンター ★★★★★アベンジャーズ ★★★★★THE GREY 凍える太陽 ★★★★★ディーパー・シェイド・ブルー ★★★★★プンサンケ ★★★★★WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々 ★★★★★プロメテウス ★★★★★あなたへ ★★★★★神弓 KAMIYUMI ★★★★★HOME: 粉川哲夫のシネマノート
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2012年8月公開

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遊星からの物体X ファーストコンタクト ★★★★★

■The Thing/2011/Matthijs van Heijningen Jr.

◆ジョン・カーペンターのThe Thing(1982)に付けられた邦題『遊星からの物体X』をよく生かしてくれた。日本では、しばしばものの継承を怠る(あるいはあえて絶つ)傾向がある。そうすると、歴史をわすれてしまう。せっかくの先人の努力がもったいないではないか。それに、本作は、カーペンターの作品の「続編」を意図した面もある。

◆しかし、そのためにこの新<The Thing>は、やや損をするかもしれない。旧作と比較されるからだ。比較してすぐに気づくのは、映像の綺麗さである。それは、この30年間に飛躍的に進んだCGIによる映像技術がある。だが、ほころびなくつくられた「怪物」は、その分、手作りのおどろおどろしさや胡散臭さが失われる。CGIの映像としてかなり「あたりまえ」の仕上げなので、この映画に「気持ちの悪さ」を感じることはできない。

◆いまではカーペンターの<The Thing>は、ホラーの名作の一つとしてしか見られないかもしれない。が、この映画は、70年代のアメリカで一般層のあいだにひろまったある種のラディカリズム(セックスやドラッグやフェミニズムや解放の思想など)が、レーガン政権とともにかき消されていく状況にぴったり拮抗していた。まわりがだんだん保守的になり、ラディカルな人間が排除されていくのだが、まるでそういう状況に合わせたかのようにひりまり始めるAIDS禍が、まさにこの映画で描かれる異星からの怪物が人間の体のなかに巣食ってしまうという事態に似ているので、社会的にもリアルさがあった。いまの状況は、80年代初頭とは大分違うので、その「続編」として機能するのはただのストーリだけである。

◆80年代の社会的雰囲気との関係について、わたしはかつて『シネマポリティカ』に所収の文章で書いたことがある。→http://cinemanote.jp/books/cinemapolitica/c-031.html

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◆キネマ旬報2012年8月上旬号にレビューを書いた。自分でも満足している。