今月気になる作品
★★ 50歳の恋愛白書 (監督がアーサー・ミラーの娘だからといって、ウナノ・ライダー、ジュリアン・ムーア、キアヌ・リーブスのような大物を「友情出演」させなくてもよかった。ロビン・ライト・ペンとアラン・アーキンだけでも、年齢差のある夫のわがままに尽くしてきてハタと危機に陥った50女の迷いと選択をもっと斬新に描くことはできただろう。余分だが、日本ではお産のときハイヒールは履かない)。
★★★ インビクタス 負けざる者たち (「偉い人」の話といううのは、拝聴するしか手がない)。
★★★★ 新しい人生のはじめかた (街を歩きながら愛が深まっていくというのはパターンだが、街にはそういう願望を呼び起こす要素がある)。
★★★ 食堂かたつむり (柴崎コウに歌どころか声も出させなかったおかげで、彼女の本当の魅力が浮き出た。料理シーンは期待ほどではなかった)。
★★★ サベイランス (父親デイヴィッド・リンチと比較されるので損をしているが、なかなかどうして。自分の幼児期と重ねあわせて両親に「復讐」している気配もある)。
★★★★ 抱擁のかけら (同性愛者が異性を愛し罰を受けるというひねったオイデプス物語)。
★★バレンタインデー (リチャード・カーティスを模倣しながら、アルトマンから何も学ばなかった凡作ながら、ジュリア・ロバーツの出るあたりは悪くない)。
★★★★ 恋するベーカリー (アメリカでは、70年代に勝手に離婚した夫婦がもとに戻りたがっているかのよう)。
★★★★ コララインとボタンの魔女 (引越したばかりの古い家で、少しスネた少女が見る「夢」なのだが、その映像の美しさと斬新なアイデアに魅惑される)。
★★★ 人間失格 (濡れ場を描かず、しかも暗示などというケチな技法に頼らないユニークな時間処理が面白いが、もう「人間」が消滅してしまった今日では、問題は「失格」云々ではない)。
★★★☆ 渇き (「ホラー」的ラブストーリーと言ってもいいが、身体性への「変態的」執着とエロティシズムはなかなかのもの)。
★★★☆ ニューヨーク、アイラブユー (オムニバスだから、楽しみはつまみ食いで楽しめばいい。岩井のパートは悪くない)。
★★★★ すべて彼女のために (一介の教師が、冤罪の妻を奪い返し、幼い息子といっしょに国外脱出する――否定性が消滅した時代(ボードリヤール)には、こういうこともありえる。周到に構築された演出と、目が語るすぐれた演技。ただのサスペンス映画にとどまらない)。
★★★☆ バッド・ルーテナント (旧作を意識して見なければ、細部と音楽が面白く、ケイジの「ずっこけ男」もありかと思ってしまう。なお、旧作で重要だったドラッグは、ここではただの演出素材にすぎない)。
★★ しあわせの隠れ場所 (「感動」実話とのことだが、リッチな「白人」が弱い者、しかも「黒人」を助けるというテーマは、先が見えるし、全体として「キリスト教右派」的で不快)。
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